このページは、開示ワイヤーが収録する官報の決算公告を読むときの前提と、公告ページ・企業ページに出てくる表記の意味をまとめたものです。数値の評価や投資判断には触れず、公告に印字された事実をどう読むかだけを説明します。
決算公告とは
株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告する義務があります(会社法440条1項)。公告の方法は定款で官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかを定め、官報または日刊新聞紙の場合は貸借対照表の「要旨」の公告で足ります(同条2項)。
- 有価証券報告書を提出している会社は決算公告が免除されます(同条4項)。上場企業の決算が官報にほとんど載らないのはこのためで、上場企業の決算はEDINETの有価証券報告書とTDnetの決算短信から収録しています。
- 開示ワイヤーが「決算公告」として収録するのは、官報(インターネット版官報)に掲載された分と、一部の企業の電子公告(自社サイト掲載分)です。官報由来のデータは公共データ利用規約(PDL1.0)にもとづいて利用しています。
- 官報の要旨公告は貸借対照表のみのものが大半で、損益計算書の要旨まで掲載する公告は全体の1割弱です。売上高は貸借対照表には載らないため、公告だけでは分からない企業が多数を占めます。
貸借対照表の読み方
貸借対照表は「資産合計 = 負債合計 + 純資産合計」の関係で成り立っています。たとえば資産合計が100億円、負債合計が60億円なら、純資産合計は40億円です。公告ページと企業ページでは、この中から次の科目を主に表示します。
| 表示項目 | 貸借対照表での位置 | 読み方 |
|---|---|---|
| 総資産 | 資産の部の合計 | 事業の規模を示す基準値。比率計算の分母に使います |
| 純資産 | 純資産の部の合計 | 資本金・資本剰余金・利益剰余金などの合計。マイナスなら債務超過 |
| 利益剰余金 | 純資産の部の内訳 | 過去の利益の累積。マイナスは繰越損失(累積赤字)を意味します |
| 当期純利益 | 純資産の部の内訳または損益計算書 | 貸借対照表のみの公告でも、株主資本の内訳に「当期純利益」の行が印字される場合があります |
- 「債務超過」のタグは、公告に印字された純資産合計がマイナスであるという事実だけを示します。
- 公告によっては純資産合計や負債合計の小計行が印字されません。この場合、印字された内訳(株主資本・負債の部の各科目など)から合計を算出し、資産合計との一致を検証できた行だけを表示しています。該当する表には算出値である旨の脚注が付きます。
- 単位は公告ごとに円・千円・百万円と異なります。開示ワイヤーでは全て円に換算したうえで億円・万円の表記に揃えています。
表記の約束
- マイナスの値は「▲」と朱色で表示します。官報の原本では「△」が使われることがあります。
- 「第17期」などの期数は公告に印字された事業年度の番号です。期末月が決算月で、企業ページの決算月の表示もこれにもとづきます。
- 事業年度が6か月など1年未満の期は、表の脚注にその期間を記載します。期ごとの金額を年次として比較できない場合があります。
- 「非開示」「—」は、その期の公告に損益計算書の要旨が掲載されていない(貸借対照表のみの決算公告)ことを示します。
- 「検証中」は、その期の公告に当期純利益の印字はあるが、符号または単位の判読を検証中のため非掲載にしていることを示します。
- 「未収録」は、その期間の決算公告・報告書を収録していない期です。期の区切りは前後の期末からの推定で、欠落した期を詰めずに軸上に空きを残して描きます。
- 「前期比」は、直前の期が収録されていて、期末の間隔が15か月以内のときだけ使います。官報の収録に抜けがあり期間が離れている場合、公告ページでは前期の列を出さず、企業ページの決算ハイライトでは「FY2024比」のように比較対象の期を明示します。
決算公告に載らないもの
- 売上高: 貸借対照表のみの公告には売上高がありません。売上高・営業利益・経常利益は損益計算書の要旨が掲載された公告、または有価証券報告書・決算短信からのみ収録します。
- 従業員数・代表者・所在地: 公告の対象外です。企業ページのこれらの項目は国税庁法人番号公表サイト・gBizINFO・日本年金機構の適用事業所検索、および商業・法人登記から取得しています。
- 前期の数値: 決算公告には当期の数値しか載りません。企業ページの推移は、複数年の公告を同じ企業に紐付けて並べたものです。
法人種別による違い
株式会社以外の法人は、決算書の様式と科目の名称が会社法の計算書類と異なります。開示ワイヤーでは社名の法人格語から法人種別を判定し、科目の見出しを種別ごとの語に置き換え、事業会社の物差しで計算する比率を表示しないようにしています。
| 法人種別 | 売上高にあたる行 | 純資産にあたる行 | 当期損益にあたる行 | 資本金にあたる行 |
|---|---|---|---|---|
| 特定目的会社(TMK) | 営業収益 | 純資産(優先出資を含む) | 当期純利益 | 資本金(特定資本金) |
| 投資法人 | 営業収益 | 純資産(投資主資本) | 当期純利益 | 出資総額 |
| 公益社団法人・公益財団法人 | 経常収益 | 正味財産(令和6年改正基準では純資産) | 正味財産増減額 | なし |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 経常収益(公益法人会計基準を採る場合) | 正味財産 | 正味財産増減額または当期純利益 | なし(一般社団法人は基金) |
| 特定非営利活動法人(NPO法人) | 経常収益 | 正味財産 | 正味財産増減額 | なし |
| 医療法人 | 事業収益 | 純資産 | 当期純利益 | 出資金・基金 |
特定目的会社(TMK)と投資法人
特定目的会社は資産の流動化に関する法律、投資法人は投資信託及び投資法人に関する法律にもとづき、不動産などの資産を保有して投資家に配当するための器(導管体)です。営業収益の大半が賃料・配当・売却益で、利益の分配により法人税がほぼ生じないため、利益が営業収益とほぼ同額になるのが構造上の通常の形です。純資産の大半は優先出資・投資主資本で、事業年度が6か月のことがあります。このため自己資本比率やROEを事業会社の水準と比較する意味は薄く、開示ワイヤーではこれらの法人を注目開示・純利益ランキング・速報の選定対象から外し、一覧では種別のチップを付けて区別しています。
公益法人・一般法人・NPO法人
公益社団法人・公益財団法人は公益法人会計基準、特定非営利活動法人はNPO法人会計基準で決算書を作成します。収益の合計は「経常収益」で会費・寄付金・補助金を含み、当期の損益にあたる行は「正味財産増減額」です。資本金の科目はなく、純資産にあたる行は「正味財産」として印字されます。公益法人会計基準は令和6年12月の改正で「正味財産」が「純資産」、「正味財産増減計算書」が「活動計算書」に改められ、令和10年3月までに開始する事業年度は新旧の様式が併存します。一般社団法人・一般財団法人は会計基準が法定されておらず、公益法人会計基準と企業会計のどちらで作成された決算書も官報に載ります。
医療法人
医療法人は医療法にもとづき病院・診療所を開設する法人で、剰余金の配当が禁止されています。収益は「事業収益」、本業の損益は「事業損益」と呼び、決算公告の義務は負債50億円以上または事業収益70億円以上の法人に限られます。資本金の科目はなく、持分のある社団は「出資金」、基金拠出型の社団は「基金」が純資産の部に計上されます。
他の決算開示との関係
同じ企業の同じ決算期について、官報の決算公告・有価証券届出書・有価証券報告書が重なることがあります。開示ワイヤーでは1社1期につき1行だけを持ち、有価証券報告書、有価証券届出書、官報決算公告の順に優先して行ごと置き換えます。科目単位で異なる出典の値を混ぜることはしません。各期の出典は企業ページの財務推移の表と公告ページの出典欄で確認できます。